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辿る
このベンチは八戸工業大学感性デザイン学部の卒業制作2024で制作された。制作するにあたり2022年10月から活動を始め1年以上の月日がかかっている。工事現場の仮囲い看板の制作からベンチ完成までのプロセスを辿っていく。
2022.10
現場見学
本製品は老朽化により新築される八戸港フェリーターミナルビルに設置される。建設に伴い工事現場の仮囲い看板をデザインする運びとなり、測量を兼ねて現場のリサーチを行った。
学生定例会1
多角的な視点からコンセプトのアイデアを得るため学生同士で意見交換を行なった。最初の定例会では、仮囲い看板に描くモチーフやイラストを検討し、青森県八戸市の特徴を整理した。
企業定例会1
ベンチ制作にあたり、関連会社による民学連携のプロジェクトチームが発足された。自己紹介やベンチの制作工程や仮囲い看板のイラストについて意見交換を行なった。
2022.11
事例調査(仮囲い)
再開発が進む渋谷を対象に仮囲い看板の調査を行った。アーティストや写真家の作品を起用したり、開発後の地域の展望や魅力を表現したりする内容が多く見られた。
学生定例会2
渋谷区での調査を共有し、看板の遠目、近目でのデザインの効果や学生各自が提案するイラストのアプローチを検討した。「個を活かす、集合を活かす」をコンセプトに設定し方向性を整理した。
企業定例会2
仮囲い看板のイラスト2点とフェリーターミナルに設置するベンチのデザインを提案した。看板は2枚とも採用され、ベンチは事例調査から始めるべきだとアドバイスをいただいた。
2022.12
事例調査(ベンチ)
東京都をはじめ岩手県、宮城県、静岡県、新潟県、兵庫県にて公共施設のベンチや建物の調査をした。調査にあたってベンチをスケッチし、建物との調和に必要な事項や特徴を分析した。
企業定例会3
事例調査をもとに、ベンチ制作の方向性を再度提案した。コンセプトと提案するデザインの整合性や新規性を見いだすため、地元や木そのものの調査もする必要があるとアドバイスをいただいた。
2023.01
学生定例会3
12月中に仕上げた看板のイラストとそのキャプションを入稿用にまとめた。イラストの特徴を明記することで、県外の利用者だけでなく市民の方にも楽しんでもらえるようにした。
ワークショップ(day1,2)
ベンチのデザインについてアイデアを検討するために、校内でワークショップを企画・開催した。1月は「木を知る」「波を知る」の計2回実施した。
2023.02
企業定例会4
ワークショップの結果を踏まえ、端材・廃材を活用したベンチ制作を提案した。コンセプトとの結びつきや、木材の中でも廃材を素材としてベンチに応用することが可能かどうか検討した。
五戸町でのプレゼン
五戸町のイベントに参加し、その主催者へベンチ制作についてプレゼンした。五戸町にある家具製作会社と繋がることができ、廃材の調査や現場見学へと進展した。
仮囲い看板設置
建設中のフェリーターミナルの工事現場に仮囲い看板を設置した。また現場の事務所を見学し、内装に用いる床・壁の素材見本や模型を見せてもらい、提案するベンチの色味や、企画の参考にした。
ワークショップ(day3~6)
学生各自の得意な手法でベンチのデザインを提案した。粘土やイラストで「波」を表現する、「廃材」を用いて試作する、設置するロビーの模型を制作するという3方向に分かれ意見を出し合いながら進めた。
2023.03
ワークショップ(day7)
これまで制作した5台のベンチの試作品を実際に使用し、意見交換をした。それぞれの試作に対して率直な意見や新たなアイデアがあり、貴重な学生の意見を聞くことができた。
(有)五戸木工見学
五戸町の家具製作会社で、廃材の現状や活用方法について調査を行った。試作品を見せたり実際の廃材や家具制作の工場を見学したりしながら、廃材の活用の難しさや家具制作のプロセスを調査した。
style clothing laula調査
施工会社の方からご紹介いただき五戸町のstyle clothing laulaへ訪問した。実際に住宅廃材や流木を用いて家具を制作しており、廃材の特徴や良さを活かしている。また試作品を見せて廃材をどう活用していくべきか検討した。
企業定例会5
3/10にオンラインでヒアリング調査やワークショップの報告をし、31に対面で試作品や模型を用いて廃材の選定や活用方法を協議した。当初ベンチは個人利用を前提としていたが、設置するロビーの機能を考慮し複数人利用の規格も視野に入れることになった。
2023.04
模型制作
複数人利用のベンチの規格を検討するにあたり、ワークショップで制作したロビーの模型に合わせてベンチの模型を8種類の規格で制作した。また、建物とベンチと人のバランスを検討するため人の模型も立体で制作した。
モックアップ制作
模型で制作した8種類の規格のモックアップを実寸大で制作した。骨組みと座面のみで制作し、実際に座れる人数や持ち運びに必要な人数などを検討するのに用いた。
レイアウト計画
1/20模型や実寸大のモックアップを使用してレイアウトを計画した。ベンチを単体で使用するだけでなく、連結させたり重ねたりすることで空間の見え方や使い方に幅を持たせられるように構想した。
材料提供
ベンチに活用する建築廃材を検証するため、(有)五戸木工から住宅廃材を提供してもらった。住宅廃材は、垂木など軽量のものから建物の柱など重量があるものまで幅広い用途に用いられていたことがわかり、それぞれどういった活用ができるか検討した。
企業定例会6
模型でレイアウトを組むだけでなくパースのイメージスケッチや木を使った模型を作るなど、さらにリアルな検証が必要だとアドバイスをいただいた。
2023.05
建設現場見学
ベンチの規格の最終調整として建物のスケールを確認するため、フェリーターミナルビルの建設現場を訪問した。ロビーや出入口の測量を行い、構想したベンチの規格やレイアウトによる空間の見え方に不備がないか確認した。
建設会社プレゼン・材料調達
(株)協栄建設にベンチ制作のプレゼンテーションを行い、建設現場で出た廃材を提供いただいた。住宅廃材とは異なる規格・種類の廃材も見受けられた。
試作制作
建築廃材を用いてベンチの最小規格である800×400×400mmの試作を制作した。ビスを使わず接着剤だけを使用し、提供していただいた廃材を積層して組み立てた。
企業定例会7
建築廃材による試作やパーススケッチに基づき、ベンチは3種12点を制作する構想が固まった。面ごとに木目の向きを揃えることにより、建物や空間に広がりを持たせる視覚効果を狙いとしている。
木工会社プレゼン
12点のベンチの制作協力を依頼するため(有)苅田工業に試作やモックアップ、イメージなど制作構想のプレゼンテージョンを行った。ベンチとして強度を出すため、製作工程やベンチの構造の改善が必要となることがわかった。
2023.06
図面作成
制作のための図面を作成した。最小規格の800×400×400mmの図面を作成し関係者へ共有した。図面に起こすことで制作の手順のイメージができ、構造について考えやすくなった。
木工会社打ち合わせ
図面やモックアップを参考にしながら製作工程を整理し、木工会社での制作スケジュールを打ち合わせした。また木工会社の意見を踏まえ、工程ごとに使用する建築廃材の種類を整理した。
2023.07
企業定例会8
大人4人で運べるサイズが最大となったため最大サイズに変更があり、それに伴って他の規格・台数が変更となった。
木工会社打ち合わせ
規格・台数が800×400×400が6台、1,200×400×400が6台、1,200×1,200×400が2台に決定した。
木工会社での試作制作
職人さん達と躯体・側面・座面について細かく制作工程を確認した。制作の負担をなるべく小さく、デザインを損なわない方法を工夫しながら進めた。
企業定例会9
(有)苅田工業にて試作を見ながら本制作の計画を立てた。試作の作り方で進めることになり、八戸市の実証実験、フェリーターミナルビルへの納品に合わせて制作を進めることになった。
2023.08
材料調達
デザイン上必要な黒い木材を(有)五戸木工よりいただいた。ウォルナットのような元から黒い木材は廃材だと足りず、建設現場で余った防腐剤と塗料が染み込んで中まで黒いスギをいただいた。
実証実験のための制作
9月に行われる八戸市の実証実験で設置するために800×400×400と1,200×1,200×400を1台ずつ制作した。加工・組立・研磨は工場で行い塗装は大学で行った。
実証実験
八戸市主催で実証実験「みちニワ」が実施された。中心街で人中心の空間づくりを目指すもので、3車線のうち1車線を封鎖しそこにストリートファニチャーを設置する。街中の人の意見を聞くために制作したベンチ2台も設置した。
2023.09
企業定例会10
実証実験が実施されている八戸市中心街で行った。実際に制作した2台を見ながら仕上げについて検討した。塗装は1度塗りとし、木材の素材感がより出るようにした。
フィードバック
大学の中間審査にてこれまでの制作や今後の展望について講評をいただいた。廃材の活用の研究として、また公共施設に置く家具制作として今後の方向性をしっかり定めなければならないとのことだった。
本制作(加工~研磨)
(有)苅田工業にて残り12台の制作をした。ブロック面・座面・側面を制作し、組んだ骨組みにビスで留めていく。表面を研磨し面取りをする。この時に割れや節、松脂の処理をしていく。
2023.10
本制作(塗装)
全てのベンチを大学に運搬し、塗装する。塗装屋から伝授していただいたことを学生に伝え、分担して塗装をした。
花巻ものづくりEXPO2023展示
地元の企業や大学が出展する「花巻ものづくりEXPO2023withルンビニーアート」に八戸工業大学も出展することになった。学部生の卒業制作として展示し、興味を持ってくれる方も多く大学の宣伝にもつながった。
2023.11
本制作(仕上げ)
ベンチは木材を材料にしているため、経年により反りや収縮が発生する。ブロック面に反りが出ておりベンチの組み合わせ時に干渉してしまう恐れがあるため、表からビスを打ちダボで埋めることになった。
フェリーターミナルビル搬入
新フェリーターミナルビルも完成に近づき、ベンチの搬入が行われた。学生、(株)田名部組、(有)苅田工業のご協力のもと無事に全てのベンチを搬入することができた。仮設置を行い完成形を確認するとともに、ベンチの足のクッション材取り付けや設置時に必要となる番号の割り当てをした。
2023.12~
写真撮影
新フェリーターミナルでいろいろなレイアウトを組んで写真撮影を行った。今後の参考になるよう展示台への応用、背もたれ付きベンチへの応用など学生と相談しながらレイアウトを組んだ。
学内展示
八戸工業大学感性デザイン学部の研究発表を展示形式で行った。廃材の活用の研究として展示をし、学部内だけでなく他学科や大学職員の方など多くの方に意見をいただいた。
オープニングセレモニー
2/1に八戸港フェリーターミナルビルのオープニングセレモニーが行われた。セレモニーでは受付台や報道陣のベンチとして使用され、来賓の方へベンチの説明をすることができた。